通州事件に言及した書籍

通州事件は、1937年11月29日午前2〜4時*1から開始された冀東防共自治政府*2所属の保安隊の反乱に伴い発生した通州在住の日本人・朝鮮人に対する暴行・殺傷事件である。
歴史修正主義者の中村粲東中野修道によって未だに反中プロパガンダとして利用されているが、その中には戦後通州事件の存在が封印されたと主張するものがある。

 この通州事件は「保安隊変じて鬼畜」(東京朝日新聞の昭和12年8月3日夕刊1面)などと日本国内の新聞では大見出しで報じられ、日本人居留民を守るはずの現地保安隊の重大な裏切り虐殺事件として戦前の日本人のほとんどが知っている有名な事件であったが、戦後はまったく取り上げられなくなった。薄々感づかれた方もいるかもしれない。この中国人保安隊の日本の民間人へ行った虐殺の手口というのが、戦後、日本軍が中国人に行ったとする虐殺の手口に酷似している事に気づかれれば、なぜ通州事件が戦後、封印されてしまったのかは想像がつくであろう。

http://www.geocities.jp/showahistory/history02/12e.html

しかし、通州事件が封印されたというのは出鱈目である。目に付いた古い本を調べたところ、以下の書籍には、通州事件について記載されている。

1958年 軍閥興亡史3」伊藤正徳 (単行本について)昭和33年発行。
1963年 「東京兵団 1 胎動篇」畠山清行 昭和38年発行。
1970年 「盧溝橋事件」寺平忠輔 昭和45年発行。
1976年 蒋介石秘録12日中全面戦争」 昭和51年発行。
1978年 「日中15年戦争(中)」黒羽清隆 1978年発行。


軍閥興亡史」、「蒋介石秘録」、「日中15年戦争」については極わずかな記載しかないが、全体として取り扱っている範囲を見て不自然な分量ではない。「東京兵団」や「盧溝橋事件」は通州事件について、それなりにページ数を割いて記載している。

南京事件について注目される以前から通州事件について書かれている

南京事件が注目されたきっかけである本多勝一の「中国の旅」が掲載されたのは1971年である。洞富雄の「近代戦史の謎」が1967年に出ているが、一般的な影響という点で見ればやはり本多の「中国の旅」を挙げるべきだろう。それを考慮すれば、終戦直後から1971年までは、通州事件の方が南京事件より多く言及されていたと見るべきだろう。

むしろ、南京大虐殺の事実の方が、日中国交回復が具体化するまでないがしろにされてきたといえる。

*1:諸説あり

*2:河北省東部に日本軍により作られた傀儡政府