日米開戦時の入江相政日記

昭和天皇侍従長を勤めた入江相政氏の日記。

入江相政日記〈第1巻〉
(昭和16年)
十二月八日(月) 快晴 快適 六、三〇 一一、三〇
 いよいよ日本は米英両国に宣戦を布告した。来るべきものが来ただけの事であり却ってさっぱりした。九時前に出て省線浜離宮に行く。天気がよくて鴨は余りとれない。零時半のニュースによると遠くハワイにまで爆撃に行っている。痛快だ。一方シンガポールフィリッピン、グワムは勿論、馬来に敵前上陸。泰と共同、馬来より侵入した英軍を撃退中との事。三時に三井さんと一緒に出勤(鴨猟には主猟官は鍋島陸、島津久範、牧野伸通、京極高光、石川諸氏)。宮城前には大学生の旗を持っての行進、その外民草の奉拝引きも切らず。五時半帰宅。君子は留守、子供は予の帰るのを待っている。すぐ鴨を料理して一緒に食べる。令子は五膳、為年三膳、可愛い。七時五十五分電報で召集される。布哇ではウエストバージニアオクラホマの二隻撃沈、その他四隻大破、大型巡洋艦四隻、航空母艦一隻、運送船一隻。マニラでは飛行場二ヶ所で夫々五十機撃破、何と嬉しいことであらう。侍従長、鮫島さんと握手する。十時半帰宅。入浴。十一時入床。



「ウエストバージニアオクラホマの二隻撃沈、その他四隻大破」というのは、戦艦アリゾナ(沈没)、戦艦オクラホマ(沈没)、戦艦ウエストバージニア(沈没)、戦艦カリフォルニア(沈没)、戦艦ネバダ(大破)、戦艦テネシー(大破)の6隻を指していると思われ、ほぼ正確。
大型巡洋艦四隻、航空母艦一隻、運送船一隻」については、おそらく戦艦メリーランド、戦艦ペンシルベニアの他、軽巡洋艦ロウリー、軽巡洋艦ヘレナ、駆逐艦母艦ドビン、水上機母艦カーチス、標的艦ユタ、機雷敷設艦オグララなどを指していると思われるが詳細不明。

沈没 戦艦アリゾナ、戦艦オクラホマ標的艦ユタ
沈没(後、復旧) 戦艦ウエストバージニア、戦艦カリフォルニア、機雷敷設艦オグララ
大破 戦艦ネバダ、戦艦テネシー駆逐艦ショー、駆逐艦ダウンズ、駆逐艦カッシン、工作艦ベスタル
中破 戦艦メリーランド、戦艦ペンシルベニア軽巡洋艦ロウリー、軽巡洋艦ヘレナ、駆逐艦母艦ドビン、水上機母艦カーチス